アメリカで生活していると、多くの地域では車の運転が必要不可欠です。ピッツバーグでも、スーパーや病院、空港などへの移動には車が便利な場面が多くあります。

ただ一方で、ピッツバーグは公共交通機関も一定程度整っており、生活の初期段階では「必ず運転が必要」というわけではありませんでした。

それでも免許取得を決めた理由のひとつが、身分証明書としての利便性です。現在はパスポートを唯一のIDとして使用していますが、日常的に持ち歩くには紛失や盗難のリスクが懸念されます。

その点、アメリカの運転免許証は広く身分証明書として利用される重要なIDです。特に今回は、Real ID(リアルID)対応の免許証を取得することが目的でした。Real IDは連邦基準を満たした身分証明書で、今後は国内線の搭乗や一部の連邦施設の入館などで必要になるとされており、将来的な利便性を考えて取得する意義があると感じました。

こうした背景から、今回の免許取得は「運転のため」という目的に加え、「日常的に安心して使える公式な身分証明書を持つこと」が大きな動機となりました。

とはいえ、日本では長らく運転していなかった、いわゆるペーパードライバーの私にとって、アメリカでの免許取得は想像以上に大きなハードルで、3度目の正直でようやく実技試験に合格しました。今回はその合格までの記録を、できるだけリアルにまとめます。

筆記試験についてはこちら の記事を参考にしてください。

運転免許取得の概要(ペンシルベニア州)

ペンシルベニア州では、運転免許の実技試験は仮免許(Learner’s Permit)の有効期間内であれば複数回受験することができます。ただし、受験を重ねる中で一定回数(一般的には3回程度)不合格が続くと、そのまま継続して受験することはできず、仮免許の延長手続きが必要になります。この場合は追加の申請書類を提出し、再発行された仮免許のもとで改めて実技試験を受ける流れになります。そのため、制度上「完全に終了する」というわけではありませんが、一区切りとして手続きが発生する仕組みになっています。

結果として、受験回数には実質的な制約があり、限られたチャンスの中で合格を目指す必要がある試験と言えます。私は日本の運転免許を持っていましたが、実際にはほとんど運転しておらず、完全なペーパードライバー状態でした。

受験したスクール

実技試験はCindy Cohen School of Driving で受けました。

Cindy Cohen School of Driving

3回ともOne Hour Test Prep Followed By A Driver’s Exam at CCSODというコースで受験しています。このコースは1時間の直前レッスンを受け、そのまま実技試験に臨む流れになっています。レッスンと試験が同じ車・同じ環境で行われるため、初心者には安心感があります。

実技試験の内容

試験は大きく3つに分かれています。なお、試験の評価基準の詳細はペンシルベニア州の公式規定 で確認できます。

その1. 車の基本操作チェック

車に乗り込むと、エンジンをかけた状態で窓を開けるよう指示されます。車外から試験官に車の基本操作を口頭で指示され、それを正しく操作できるか確認されます。

チェックされた項目は以下の通りです。

  • Headlights: ヘッドライトのオン/オフ
  • High beams: ハイビームのオン/オフ
  • Left/Right turn signal: 左右のウインカーのオン/オフ
  • Four way flasher: ハザードランプのオン/オフ
  • Defroster: デフロスター(霜取り装置)
  • Wipers: ワイパーのオン/オフ
  • Brake: ブレーキランプ
  • Emergency brake / Parking brake: サイドブレーキ
  • Horn: クラクション

事前に操作方法と英語での言い回しを確認しておけば、問題ありません。ただ、同じ指示でも試験官によって表現が違う場合があるので、複数の言い回しを確認しておくと安心です。私自身、1回目の試験ではレッスン中とは異なる言い回しでヘッドライトの操作を指示され、一瞬戸惑ってしまいました。

その2. 縦列駐車(Parallel Parking)

最も重要な評価ポイントです。

  • ウインカーを出すタイミング
  • ハンドルを切るタイミング
  • ミラー確認
  • 後方確認
  • 車体の位置調整

これらを正確に行う必要があります。3回までは切り返しをすることが許可されています。

その3. 路上走行

短い距離ですが実際に一般道路を走ります。右左折・停止線での停止・周囲確認・合流など、安全運転ができているかを見られます。

1回目の試験

1時間のレッスンでは、試験本番と同じルートで練習します。縦列駐車では、どのタイミングでハンドルを切るか、どこを基準にするか等、実践に即した形で丁寧に教えてもらえました。路上を走行する際も、左右を確認するポイントや適切な走行速度等を教えてもらえます。

ただ想定外だったのは、レッスンの先生が重要だと思っているポイントと、試験官が重要視しているポイントが必ずしも一致するわけではないということです。

結果:不合格

試験が終わった後、試験官より結果と理由を告げられます。私が不合格になった理由は以下の通りでした。

理由1. ヘッドライトの操作が正確でない: レッスンでは「headlights」と言われていたのに、試験官は別の言い方をしており、一瞬迷ってしまいました。その際試験官に怒鳴られ、動揺してしまいました。

理由2. ウインカーのタイミングが遅い: 縦列駐車をする際ウインカーを出すのですが、そのタイミングが遅いと言われました。背景には、ヘッドライトで試験官に強めに注意されたこともあり、心理的に焦っていたことがあります。

理由3. 縦列駐車中の左右確認不足: レッスンで「このポイントで左右/後方を見ればOK」と言われた箇所では全て安全確認をしていましたが、試験官には「まだ足りない」と判断されました。

2回目の試験

2回目は異なる車種での試験でした。そのためレッスンの際に再度、デフロスターやサイドブレーキの操作を確認しました。また前回の反省を活かし、「ここでは左右/後方確認をするべきですか?」と確認しながらレッスンを受けました。レッスンを担当してくださった先生からも、「何も問題ないから大丈夫だと思うよ。」と言っていただき、前回よりは落ち着いて試験に臨むことができました。

結果:不合格

でも結果は不合格…。2回目の試験の不合格が、精神的にしんどかったです。レッスンで言われたポイントは全て行いましたが結果が伴わず、テストと同じ場所でレッスンを受けている意味があるのだろうかと感じてしまいました。

理由1. 縦列駐車の左右確認不足: レッスンで言われたポイントでは全て左右と後方の確認をしましたが、試験官基準では不足していると判断されました。

理由2. 路上合流で待ちすぎ: レッスンでは「焦らず安全なタイミングで」と言われていたため慎重に待ちましたが、試験官からは「待ちすぎ」と評価されました。このように、レッスンの先生と試験官の"正解"が微妙に違うという点がかなり厄介でした。

3回目の試験(最終)

3回目は、前回のフィードバックを徹底的に反映しました。特に縦列駐車では、 「全行程でとにかく左右確認/後方確認を入れる」 という方針に変更しました。

またこの回のレッスン担当の先生は、日本でタレント活動をしていた経験がある方らしく、非常にユニークで明るい方でした。緊張感の中でも、少し気持ちがほぐれたのを覚えています。

結果: 合格

3回目の試験官は、試験のセクションごとに「今の試験は合格です」と言ってくださり、とても落ち着いた気持ちで次のセクションに進むことができました。最終結果は、「Excellent」と言われて合格しました。

Road Test

試験後の流れ

合格後はその場で仮の合格証明を受け取りました。その後、約1〜2週間後に郵送で書類が届き、それを持って正式な免許申請へという流れになります。

感想

今回の経験で強く感じたのは次の4つです。

1. レッスンの先生と試験官の基準は違う: これはかなり重要です。同じ「縦列駐車」でも、レッスンでは「ここだけ見ればOK」と言われた箇所が、試験官基準では「もっと細かく見るべき」となることが普通にあります。「自動車学校なんだから、押さえるべきポイントを統一しておいてよ!」というのが正直な感想でした。

2. 縦列駐車は"過剰なくらい安全確認"が正解: 路上では安全確認をしすぎるとかえって減点対象になってしまう場合がありますが、縦列駐車は別です。全ての行程で、左右/後方の確認を行う方が確実だと感じました。

3. ウインカーは早めが安全: 「まだ早いかな?」くらいで出しても問題ありません。縦列駐車をし始める時や、試験官に「次の角を右折してください」と言われた時に、すぐにウインカーを出すと良いと思います。

4. 路上では"待ちすぎ注意": 路上運転では安全第一ではあるものの、待ちすぎても「不必要な停止」とみなされ減点になる場合があります。強引に割り込むのも良くないですが、過度に慎重になりすぎない方が良いでしょう。

まとめ

日本で運転免許を取る際に苦労をした記憶がなかったため、正直ここまでアメリカの免許取得に苦労するとは思っていませんでした…。特に2回目に不合格になった際には、「レッスンで習ったことを全てやっているのになぜ…?」という気持ちが大きく、こんなに理不尽な思いをしなければいけないのなら、もう運転免許取得を諦めようかとすら思いました。

でも実際に取得をして、やはりパスポートを持ち歩く必要がなくなったことはかなりストレスが軽減されました。また病院や図書館のカードを作る際など、身分証明書の提示を求められる場面は意外とあり、その際に財布から免許証を出せば良いというのは、かなり利便性が高くなったと感じています。

これから受ける方にとって少しでも参考になれば幸いです。同じ経験をした方の体験談はこちらのサイト でも読むことができます。