飛行機に乗ると、搭乗券にも手荷物タグにも3文字のアルファベットが印字されています。PITならピッツバーグ、LAXならロサンゼルス。直感的に読めるものもあれば、シカゴのORDやワシントン・ダレスのIADのように、なぜその3文字なのかまったくわからないものもある。

アメリカは日本と比べて空港の数が圧倒的に多く、商業空港だけでも500以上あります。そのすべてに3文字のコードが振られている。この3文字コードはIATA(国際航空運送協会)が世界共通で管理している仕組みで、アメリカに限らず世界中の空港に割り当てられています。東京の羽田はHND、成田はNRT、ロンドンのヒースローはLHR。全世界で約11,300のコードが使われています。

ここではアメリカの空港を中心に、どういう法則でコードが決まるのかを見てみます。

都市名からそのまま取るパターン

一番わかりやすいのは、都市名や空港名の最初の3文字をそのまま使うケースです。

  • PIT — Pittsburgh
  • DEN — Denver
  • MIA — Miami
  • BOS — Boston
  • SFO — San Francisco

PITもこのパターンで、Pittsburghの最初の3文字です。大きな都市の主要空港は、こうしたわかりやすいコードを持っていることが多い。

旧名や歴史が残っているパターン

都市名と一致しないコードの多くは、空港の古い名前が由来です。

ORD(シカゴ・オヘア空港) は、この空港がかつてOrchard Field(オーチャード・フィールド)という軍用飛行場だったことに由来します。1949年に海軍パイロットのEdward “Butch” O’Hareにちなんでオヘア空港に改名されましたが、コードはOrchard Fieldの頭文字のまま変わりませんでした。IATAのルールでは、一度割り当てたコードは原則として変更しないことになっています。

LAX(ロサンゼルス) も歴史が残ったケースです。もともと2文字コードの時代は「LA」でしたが、1960年代に3文字に統一される際、末尾にXが付け足されました。このXには特に意味はなく、2文字から3文字への移行期に広く使われた慣習的な穴埋め文字です。

空港名や人名からの命名

空港が都市名ではなく固有の名前を持っている場合、その名前からコードが作られることがあります。

JFK(ニューヨーク・ジョン・F・ケネディ空港) はわかりやすい例で、ジョン・F・ケネディ大統領の名前の頭文字です。この空港はもともとIdlewild Airportという名前でコードはIDLでしたが、1963年のケネディ暗殺後に改名され、コードもJFKに変更されました。一度割り当てたコードは原則変更しないというルールの例外です。

2026年7月には、フロリダ州のパームビーチ空港がドナルド・J・トランプ大統領にちなんで改名され、コードもPBIからDJTに変更されました。JFK以来の「大統領の名前がそのままコードになる」ケースです。一方、ワシントン・ダレス空港をトランプの名前に改名する法案も連邦議会に提出されていて、もし実現すればIADのコードがどうなるのかも注目されています。空港コードは歴史の記録でもあるので、こうした改名は単なる名前の変更以上の意味を持ちます。

IAD(ワシントン・ダレス空港) は、元国務長官のJohn Foster Dullesにちなんだ空港で、Dulles International Airportの略です。もともとはDIAというコードでしたが、近隣の空港コードとの混同を避けるためにIADに変更されました。IADのIはInternational、AはAirport、DはDullesです。

IAH(ヒューストン・ジョージ・ブッシュ・インターコンチネンタル空港) も同じ構造で、Intercontinental Airport Houstonの頭文字です。

都市コードという仕組み

一つの都市に複数の空港がある場合、IATAは都市全体を表す「都市コード」を別に設定しています。

ニューヨークにはJFK、LGA(ラガーディア)、EWR(ニューアーク)の3空港がありますが、都市コードはNYCです。同じように、ワシントンDCの都市コードはWAS、シカゴはCHI。航空券の検索で都市コードを入力すると、その都市のすべての空港が対象になります。

ピッツバーグは空港が1つなので都市コードと空港コードが同じPITですが、ニューヨークやワシントンのような複数空港都市では使い分けを知っておくと便利です。

パイロットが使うのは4文字コード

ここまでの3文字コードはIATA(国際航空運送協会)が管理するもので、航空券や手荷物タグなど旅客向けの場面で使われます。一方、パイロットや航空管制が使うのはICAO(国際民間航空機関)が管理する4文字コードです。

アメリカ本土(48州)のICAOコードは、IATAの3文字コードの頭にKを付けるだけという非常にシンプルな法則になっています。

  • PIT → KPIT
  • ORD → KORD
  • JFK → KJFK
  • LAX → KLAX

このKは、アメリカのラジオ局の呼出符号(コールサイン)と同じルーツを持つ国別の識別子で、ICAOがアメリカ本土に割り当てたものです。

面白いのは、アラスカとハワイは本土とは別扱いになることです。アラスカのプリフィックスはPA、ハワイはPH(Pは太平洋地域の識別子)。したがってアンカレッジ(ANC)はPANC、ホノルル(HNL)はPHNLになります。本土のようにKを付けるだけではなく、2文字のプリフィックスが使われるため、IATAコードとの対応がずれます。

これが日本との大きな違いです。日本のICAOプリフィックスはRJ(本州)やRO(沖縄)で、IATAコードとの対応は直感的ではありません。羽田はHND / RJTT、成田はNRT / RJAA。3文字と4文字の間に規則的な関係がない。アメリカ本土のKを足すだけのシンプルさは、世界的に見ても珍しい仕組みです。

17,576通りしかない

3文字のアルファベットの組み合わせは26×26×26で17,576通り。そのうち約11,300がすでに割り当て済みで、残りの空きも減り続けています。新しい空港が開業するときに「都市名の頭3文字」が取れなければ、別のパターンで工夫するしかない。コードがわかりにくい空港があるのは、そうした事情もあります。

空港コードは一度決まると基本的に変わらないので、旧名や歴史がそのまま3文字に封印されている。ORDの裏にOrchard Fieldが残り、JFKの裏にIdlewild Airportが眠っている。搭乗券の3文字を読み解くのは、ちょっとした歴史のトリビアです。

参考