アメリカは車社会というイメージが強いですが、長距離移動では鉄道も選択肢になります。特に大陸横断に近い長距離では、飛行機より荷物の制約が少なく、景色を楽しみながら移動できる鉄道ならではの良さがあります。ピッツバーグの駅から実際に乗ったこともあり、東海岸のAcelaや寝台列車も使いました。日本の新幹線とは似ているようで、仕組みがかなり異なります。

アムトラックとは

Amtrak(アムトラック)は1971年に設立されたアメリカの全国鉄道旅客公社で、全米500以上の都市を結ぶ長距離鉄道を運営しています。日本のJRに近い存在ですが、政府が出資する半官半民の組織です。

路線は大きく3種類に分かれます。Northeast Corridor(北東回廊) はワシントンDC〜ニューヨーク〜ボストンを結ぶ最も利用者の多いルートです。長距離路線(Long-Distance) は大陸横断を含む1〜3日かけて走る路線で、寝台車が連結されています。地域路線(Regional/State-Supported) は各州が補助金を出して運営する中距離路線です。

ピッツバーグからの路線

ピッツバーグのAmtrak駅(Penn Station)から出ている路線は主に2つです。

The Pennsylvanian はピッツバーグとニューヨークを結ぶ昼行列車で、フィラデルフィアを経由します。所要時間は約9時間。アパラチア山脈を越える車窓の景色が楽しめます。

Floridian はシカゴとマイアミを結ぶ長距離列車で、ピッツバーグを経由します。もともとはCapitol Limited(シカゴ〜ワシントンDC)という路線でしたが、2024年11月にニューヨークの東河川トンネル改修工事に伴う暫定措置として、Silver Star(ワシントンDC〜マイアミ)と統合されてFloridianになりました。ピッツバーグを深夜に通過し、寝台車が連結されています。

線路を借りて走る仕組みと遅延の関係

アムトラックの遅延が多い背景には、線路の所有構造があります。

日本の新幹線はJRが線路も車両も一体で管理しています。一方アムトラックは、Northeast Corridorなど一部を除いて、全国の大半の路線では貨物鉄道会社(Union PacificやCSXなど)が所有する線路を借りて走っています。いわゆる「上下分離」の状態です。

さらに法律上、貨物列車がアムトラックの列車より優先される場合があり、貨物列車のスケジュールに押されて遅れる場面が発生します。長距離列車で数時間の遅延が起きやすいのはこの仕組みによるものです。時間に余裕を持ったスケジューリングが必要です。

Acelaとは

Northeast Corridorを走るAcelaは、アメリカで唯一「高速鉄道」と呼べる列車です。最高速度は約240〜260km/hに達しますが、線路の制約上その速度で走れるのは全457マイル(735km)のうち約40マイル(64km)のみです。ワシントンDC〜ニューヨーク間(約360km)を約2時間40分で走ります。

東京〜大阪間(約550km)を2時間15分で走る新幹線と比べると速度差は明らかですが、Acelaには別の強みがあります。駅が都心に直結しているため、空港への移動や搭乗手続きが不要な分、ドアtoドアの実用性が高い。ビジネスでの利用が多いのもこの理由からです。ファーストクラスには食事サービスが含まれます。

日本の新幹線との主な違い

アムトラック新幹線
線路他の列車と共用(一部)専用軌道
遅延多い少ない
予約不要(座席は先着)必要(指定席)
荷物大型荷物を持ち込めるサイズ制限あり
飲食食堂車・カフェあり車内販売・駅弁

寝台列車の使い方

長距離路線には寝台車が連結されており、プライベートルームで宿泊しながら移動できます。部屋の種類は主に2つです。

Roomette(ルーメット) は2人用の個室で、昼は向かい合わせの椅子、夜は上下二段のベッドになります。食事(朝・昼・夕)が運賃に含まれていて、専任のアテンダントがつきます。バスルームは共用です。

Bedroom(ベッドルーム) はRoomette の約2倍の広さで、室内にシャワー・トイレが付いています。

寝台車はシーズンや予約タイミングによって料金が大きく変わるため、早めの予約が得策です。FloridianのピッツバーグからシカゴはRoomette利用で移動と宿泊を兼ねる使い方ができます。

チケットの予約方法

Amtrak公式サイト(amtrak.com)またはアプリから予約できます。座席クラスはCoach(指定なし)・Business Class・First Classに分かれています。Acelaはすべての座席が事前予約制です。

Amtrak Guest Rewardsというポイントプログラムがあり、搭乗ごとにポイントが貯まります。ポイントは無料チケットやアップグレードに使えます。

スピードで飛行機や車に勝てる区間は限られていますが、食堂車での食事・車窓の景色・寝台での移動という体験は、アムトラックでしか得られないものです。

参考