アメリカで買い物をしていると、レジで “Credit or debit?” と聞かれることがあります。どちらもカードを出すだけなのに、何が違うのか。

結論から言えば、不正利用への保護という観点では、クレジットカードの方が安全です。ただしアメリカではデビットカードを日常使いする人の方が多く、それには別の合理的な理由があります。

根本的な違いは「誰のお金か」

デビットカードは銀行口座に直結していて、使った瞬間に自分の口座からお金が引き落とされます。クレジットカードはカード会社が一時的に立て替えて、後日まとめて請求が来る。

つまりデビットカードで不正利用されたら、自分の口座から即座にお金が消えます。クレジットカードで不正利用されたら、消えるのはカード会社のお金です。この「誰のお金が先に動くか」の違いが、後述する保護の差につながっています。

不正利用されたときの保護が違う

クレジットカードとデビットカードでは、不正利用されたときの消費者保護を定める法律が異なります。

クレジットカードはRegulation Z(Truth in Lending Act)で保護されていて、不正利用時の自己負担額は最大でも**$50**。しかも報告の時期に関係なく$50のままで、実際には多くのカード会社が「ゼロ・ライアビリティ」(負担ゼロ)を謳っています。

デビットカードはRegulation E(Electronic Fund Transfer Act)で保護されていますが、自己負担額が報告の速さによって変わります。

  • 2日以内に報告 → 自己負担は最大$50
  • 2〜60日以内に報告 → 自己負担は最大$500
  • 60日以降 → 上限なし(全額自己負担の可能性)

クレジットカードはいつ報告しても最大$50で、実質ゼロ。デビットカードは報告が遅れるほど自己負担が増える。しかもデビットカードの不正利用では自分の口座からお金が即座に消えているので、調査の間は自分のお金が凍結された状態になります。クレジットカードなら調査中もカード会社のお金であって、自分の口座は無傷です。

どちらのカードでも不正利用の経験がありますが、どちらもカード会社に連絡したら返金されました。ただ、デビットカードの場合は「一時的に口座からお金が消える」というストレスがクレジットカードにはありません。

クレジットカードにPINがない怖さ

日本のクレジットカードはICチップ+暗証番号(PIN)で決済しますが、アメリカのクレジットカードはPINなしで使えるのが一般的です。タッチ決済かサインだけで通ってしまう。

これは便利ですが、裏を返せばカードを拾った人がそのまま使えてしまうということです。デビットカードはPINの入力が求められるので、拾っただけでは使えない。この点ではデビットカードの方が物理的な安全性は高い。

ただし法的な保護の厚さを考えると、PINがなくても不正利用の負担がゼロに近いクレジットカードの方がトータルでは安全、という構図になっています。

クレジットカードはクレヒスを作る

もう一つの大きな違いは、クレジットカードを使うとクレジットヒストリー(信用履歴)が積み上がることです。アメリカではこの信用履歴がローン・賃貸契約・保険料・携帯電話の契約など、あらゆる場面で参照されます。デビットカードをいくら使っても信用履歴は構築されません。

赴任直後はアメリカでのクレジットヒストリーがゼロなので、そもそもクレジットカードの審査に通りにくいという問題があります。自分の場合は、ANAやJALが提供する在米日本人向けのクレジットカードを最初に作り、そこからアメリカでの信用履歴を積み始めました。詳しくはクレジットカードの記事 で触れています。

それでもアメリカ人はデビットカードをよく使う

不正利用への保護だけ見ればクレジットカードの方が有利ですが、実際にはアメリカ人の44%が日常の買い物にデビットカードを使っているという調査があります(NerdWallet/Harris Poll)。クレジットカードをメインにしている人は34%で、デビットカードの方が多い。

理由は「使いすぎを防ぐため」です。クレジットカードは後払いなので、手元にお金がなくても買えてしまう。アメリカではクレジットカードの残高を毎月全額払わず、リボ払い(minimum payment)で利息を払い続ける人が非常に多く、デビットカードを使う人の71%は「過去にクレジットカードの借金を抱えた経験がある」と回答しています。デビットカードなら口座にある分しか使えないので、使いすぎの歯止めになる。

若い世代ほどこの傾向が強く、ミレニアル世代の71%がデビットカードの方が「financially sound(財務的に健全)」だと答えています。保護の面ではクレジットカードが有利でも、借金を避けるためにあえてデビットカードを選ぶ——これがアメリカでデビットカードが広く使われている理由です。

では何にどちらを使うか

クレジットカードの方が安全で、信用履歴も積める。ならばデビットカードは不要なのかというと、そうでもありません。

マネーオーダー(郵便為替)の購入など、クレジットカードが使えない場面ではデビットカードが必要です。家賃の支払いもクレジットカードを受け付けない物件が多く、銀行口座からの引き落としかチェック(小切手)で払う形になります。ATMでの現金引き出しにもデビットカードが必要です。

自分の場合は、クレジットカードが使える場面ではクレジットカードで払い、使えない場面でだけデビットカードを使っています。保護の面と信用履歴の面ではこの使い分けが合理的ですが、クレジットカードの使いすぎが心配な人がデビットカードをメインにするのも、一つの考え方です。

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「Credit or debit?」と聞かれたら

レジで “Credit or debit?” と聞かれるのは、決済の処理方法を聞いています。同じカードでもデビットカードを「credit」として処理することもできますが、保護の法律はカードの種類(デビットかクレジットか)で決まるため、処理方法を変えても保護は変わりません。

クレジットカードを持っているなら、基本的にはクレジットカードで払う方が安全です。

参考