ピッツバーグで「I’m going Downtown」と言えば、Golden Triangle周辺の中心街に行くという意味です。日常的に使う言葉で、特に深く考えたことはありませんでした。
ところがニューヨークに行ったとき、同じ「downtown」が方角の意味で使われていることに気づきました。「Let’s go downtown」は南に向かう、「Let’s go uptown」は北に向かう。地名ではなく方向を指していて、ピッツバーグとは使い方が違う。
さらに調べると、シャーロット(ノースカロライナ州)では中心街のことを「Downtown」ではなく「Uptown」と呼ぶ。同じ英語なのに、都市によって意味がまったく違っていました。
すべてはマンハッタンの地形から始まった
DowntownとUptownという言葉は、アメリカ英語に特有の表現で、イギリス英語にはありません(イギリスでは「City Centre」を使います)。通りの名前のAve・St・Blvd と同じで、地名の付け方そのものに土地の事情が残っています。
起源はマンハッタン島の地形です。マンハッタンの南端(下の方)が最初に入植されて商業の中心地になりました。南が「下」でdown、北が「上」でup。downに向かうからdowntown、upに向かうからuptown。地形的に南が低く北が高いという意味と、地図上で南が下で北が上という意味の両方が重なって、この言葉が生まれました。
つまりdowntownとuptownはもともとマンハッタン島の中での方角を示す言葉でした。「繁華街」「郊外」という意味は後からついてきたものです。
ニューヨーク——方角として使う
ニューヨーク(マンハッタン)では、downtown/uptownは今でも方角として機能しています。
南に行く=going downtown、北に行く=going uptown。地下鉄の案内にも「Downtown(南行き)」「Uptown(北行き)」と表示されています。具体的には30番街より南がDowntown、59番街より北がUptownと区分されますが、日常会話では単に方向を指す言葉として使われます。
ニューヨークには「Midtown」もあります。Downtown(南)とUptown(北)の間のエリアで、タイムズスクエアやエンパイアステートビルがあるあたり。Downtown・Midtown・Uptownという三分割は、マンハッタンが南北に細長い島であることから自然に生まれた区分です。
ピッツバーグ——地名として使う
ピッツバーグの「Downtown」は方角ではなく地名です。Golden Triangleと呼ばれるAllegheny川とMonongahela川の合流点にある中心街のことを指します(インクライン で丘の上に登ると、この三角形がよく見えます)。「I’m going Downtown」は「南に行く」ではなく「あの場所に行く」という意味です。
面白いのは、ピッツバーグには「Uptown」という別の地名があることです。DowntownとOaklandの間にある地区で、Fifth AvenueとForbes Avenueが通るエリア。DowntownとUptownが、方角の関係ではなく、それぞれ独立した地名として存在しています。
シャーロット——繁華街がUptown
ノースカロライナ州のシャーロットでは、中心街のことを「Uptown」と呼びます。全米の主要都市で中心街を公式にUptownと名付けているのはシャーロットだけです。
理由は2つあります。一つは地形で、シャーロットの中心部は周囲より地形が高く、そこに行くのは文字通り「up」だった。もう一つはブランディングで、1974年に市議会が公式にUptownと名付けました。1970年代、全米の多くの都市でdowntownが衰退していた時代に、「downではなくup」というポジティブなイメージで中心街を再生しようとしたのです。
大文字のDowntownと小文字のdowntown
ここまで読んで気づいた方もいるかもしれませんが、DowntownとUptownには大文字と小文字の使い分けがあります。
大文字のDowntownは固有名詞で、特定の地域を指します。「Downtown Pittsburgh」「Uptown Charlotte」は地名です。
小文字のdowntownは一般名詞で、「街の中心部」「繁華街」を意味します。「Where’s the downtown area?」(中心街はどこ?)のように、どの都市でも使えます。
ピッツバーグの住民が「I’m going downtown」と言うとき、Dが大文字か小文字かは話し言葉ではわかりませんが、意味としてはDowntown(固有名詞、あの場所)です。
日本語の「下町」とは違う
日本語でdowntownを直訳すると「下町」になりますが、ニュアンスはまったく違います。
日本語の「下町」は東京の台東区や墨田区のような、古くからの庶民的な街のイメージです。繁華街やビジネス街とは正反対の意味合いがある。英語のdowntownは「街の中心部・繁華街」なので、日本語の下町とは逆の概念です。
アメリカのdowntownを日本語に訳すなら、「下町」ではなく「都心」や「中心街」が近い。同じ「下」と「down」でも、まったく違う場所を指しているのが面白いところです。




