アメリカに来てから、スマホが突然大音量で鳴る場面が何度かありました。最初は何が起きたのかわからず戸惑いましたが、アメリカには日本の緊急地震速報とは異なる種類の緊急速報があります。子供の誘拐事件、竜巻の接近、洪水の危険——状況に応じて異なるアラートが届きます。

WEA(Wireless Emergency Alerts)とは

アメリカのスマートフォンに届く緊急速報は、WEA(Wireless Emergency Alerts、ワイヤレス緊急警報)というシステムを通じて送られます。2012年に開始されたシステムで、FCCとFEMAが管理しています。WEA対応の端末であれば、SIMカードの種類やキャリアに関係なく、警報が発令された地域にいるすべてのスマートフォンが受信します。日本人がアメリカに滞在中も受信対象になります。

WEAのアラートは4種類に分かれています。

Amber Alert — 子供の誘拐事件

Amber Alertは、子供(未成年者)の誘拐事件が発生した際に発令される警報です。AMBERという名前は「America’s Missing: Broadcasting Emergency Response」の頭文字であると同時に、1996年にテキサス州で誘拐・殺害された9歳の少女アンバー・ハガーマンの名前にちなんでいます。情報が地域住民に早く伝わっていれば助かった可能性があったという反省から生まれたシステムです。

アラートには誘拐された子供の特徴、容疑者の情報、車のナンバーや車種・色などが表示されます。発令されるのは最も深刻なケース——子供の身体に重大な危険が差し迫っていると当局が判断した場合——のみで、単なる行方不明ではAmber Alertは発令されません。

受信したら内容を確認し、容疑者の車両を目撃した場合は911に通報します。直接関与しようとするのは危険なため、情報提供にとどめることが重要です。

Extreme/Severe Alert — 深刻な気象警報

気象に関する警報は危険度によって2段階あります。

Extreme Alert(エクストリーム・アラート)は竜巻警報・ハリケーン警報など、生命に関わる即時の危険がある場合に発令されます。ピッツバーグ周辺でも春から夏にかけてトルネード・ウォッチ(竜巻注意報)やトルネード・ウォーニング(竜巻警報)が発令されることがあります。

Severe Alert(シビア・アラート)は洪水警報や暴風雪など、深刻だが即時の生命危険ではない気象状況に使われます。

ウォッチとウォーニングの違いは、ウォッチが「条件が整いつつある」状態、ウォーニングが「実際に発生している・発生が確認された」状態です。アラートを受信した場合はFEMAや地方当局の指示に従います。トルネード・ウォーニングの場合、屋内の窓のない部屋(地下室や内側のバスルームなど)への移動が例として挙げられることが多いです。

Presidential Alert — 国家的緊急事態

Presidential Alert(大統領アラート)は、国家的な緊急事態が発生した際に大統領の権限で全米のスマートフォンに送信されます。唯一オプトアウト(受信拒否)ができないアラートです。

実際に国家的緊急事態として使われたケースはまだなく、2018年と2019年に全米規模のテストが行われています。テスト時は「THIS IS A TEST of the National Wireless Emergency Alert System.(これは国家ワイヤレス緊急警報システムのテストです)」というメッセージが届きました。

オプトアウトの設定

Amber AlertとExtreme/Severe Alertは設定でオフにすることができますが、安全上の観点からオンのままにしておくことが推奨されます。iPhoneとAndroidどちらも通知設定の中に緊急警報の項目があります。

日本の緊急速報との違い

日本の緊急速報は主に地震・津波・気象警報が中心ですが、アメリカには子供の誘拐事件を知らせるAmber Alertという日本にはない種類があります。また地震が少ないアメリカでは地震速報はありませんが、竜巻・ハリケーン・洪水など気象の多様さを反映した速報が充実しています。

突然大音量で鳴り出すと驚きますが、アメリカに住む以上は種類と意味を知っておくと、いざというときに冷静に動けます。

参考