Targetのレジ付近に、壁一面のギフトカード棚があります。Amazon、Starbucks、Apple、Netflix、レストランチェーン、ゲーム——何十種類ものカードが並んでいて、最初に見たときは「誰がこんなに買うんだろう」と思いました。
答えは、かなりの人です。全米小売業協会(NRF)の調査では、ホリデーシーズンに贈る予定の品としてギフトカードを挙げた人が44%。1位の衣類(56%)に次ぐ2位で、玩具や本を上回ります。人に贈るものとして、すでに定番の位置にあります。
「好みがわからない」をちょうどよく解決する
アメリカは多民族・多文化の国で、家族や友人でも食の好み、宗教上の制約、趣味が大きく異なることがあります。相手の好みを完全に把握するのは難しい。
お祝いの場面では小切手(パーソナルチェック)で金額を渡すこともありますが、小切手はどちらかというとかっちりした贈り方で、結婚式のご祝儀や卒業祝いのような場面で使われます。カジュアルな誕生日プレゼントやホリデーギフトには少し重い。かといって現金を裸で渡すのは味気ない。
ギフトカードは「あなたの好きなものを選んでね」という自由を渡しつつ、「この店を選んだのはあなたのことを考えたから」という配慮も残せます。小切手ほどかしこまらず、現金ほど素っ気なくない。この「ちょうどよさ」がギフトカードの立ち位置です。
お祝いにAmazonのギフトカードを贈ったことがありますが、相手の好みがわからないときには確かに便利でした。会社などからのリワードやインセンティブでTango Cardを受け取ることもありますが、Amazon、Target、Starbucksなど好きなブランドを自分で選べるので、特定の店のカードをもらうよりありがたいです。Visa/Mastercardブランドのプリペイド型ギフトカードもあって、これはほぼ現金と同じように使えます(購入時に数ドルの手数料がかかります)。
企業にとっての本当のうまみ——使われないカード
ギフトカードが企業にとって魅力的な理由は、売上だけではありません。「使われないカード」がそのまま利益になるからです。
これをbreakage(ブレイケージ)と呼びます。ギフトカードが購入された時点で企業はお金を受け取りますが、カードが使われるまでは商品を渡していないので、まだ「借り」がある状態です。ところが一定期間(通常6〜24か月)を過ぎても使われなかった残高は、順次企業の利益として計上されます。商品を何も渡さずにお金だけが残る。
43%の消費者が常に1枚以上の未使用ギフトカードを持っていて、その合計額は約$230億にのぼるという調査があります。Starbucksは1年で約$1.81億を、未使用のギフトカードとロイヤリティ残高から収益として計上しました。コーヒーを1杯も出さずに手に入れた利益です。
引き出しにしまったまま忘れる、残高が半端で使いきれない、そもそも行かない店のカードをもらう——理由はさまざまですが、使われない残高が企業に流れていく構造が、ギフトカードを「どこでも売っている」理由の一つです。
この残高に州が手を伸ばす仕組みもあります。未請求財産法(escheatment law)といって、一定期間使われなかった残高を州が「未請求財産」として回収するものです。
ただしペンシルベニア州は、有効期限も購入後の手数料も無いギフトカードを、この対象から丸ごと外しています。 小売店のカードの多くはここに当てはまるので、PAでは使われなかった残高は企業の側に残り続けます。回収されるのは、期限や手数料が付いた種類と、Visa/Mastercardブランドのプリペイドだけです。
使われなかった残高が企業の利益になるのか州の財源になるのか、その境目がどこに引かれているのか——州ごとにルールが違う のはここでも同じです。
ちなみにPA州は合計$45億の未請求財産を預かっていて、2024年の法改正で、$500以下の金額を持ち主に自動で返還する「Pennsylvania Money Match」が始まりました。返還の通知は2025年から届き始めています。心当たりがあれば州財務局のサイトで自分の名前を検索できます。
なお消費者保護のため、2009年のCARD法でギフトカードの有効期限は購入日から最低5年と定められていて、1年以内に手数料を取ることも禁止されています。もらったカードは早めに使うに越したことはありません。
「ギフトカードで支払え」は100%詐欺
ギフトカードに関連して一つ、知っておくべきことがあります。
電話やメールで「未払いの税金がある」「パソコンにウイルスがある」と脅され、「ギフトカードを買って裏の番号を読み上げてください」と指示される——これは100%詐欺です。
FTC(連邦取引委員会)が繰り返し警告しています。政府機関、電力会社、テック企業、いかなる正規の組織も、ギフトカードでの支払いを求めることはありません。ギフトカードは追跡が難しく、番号を読み上げた時点でお金は戻ってきません。詐欺師にとって都合のよい決済手段だからこそ狙われています。
自分は経験がありませんが、FTCの報告によれば毎年数万件の被害があり、被害額は年間数億ドルにのぼります。「ギフトカードで払え」と言われた時点で詐欺だと判断してください。
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アメリカのクーポン文化アメリカのクーポン文化 — なぜここまで普及しているのか郵便受けに紙のクーポンが届き、Targetのアプリにはデジタルクーポンが並びます。この文化の始まりは1887年のコカ・コーラで、ここまで定着した背景には、値段を人ごとに変えるための仕組みがありました。参考
- NRF — Survey Reveals Top Toys and Gifts for the Winter Holidays
- Bankrate — 43% of Americans Have At Least One Unused Gift Card
- Pennsylvania Treasury — Pennsylvania Money Match
- FTC — Gift Card Scams
- CBS News — What Happens to the Billions in Gift Cards That Go Unused
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