州ごとに法律も税率も違う アメリカでは、公有地の呼び名も一通りではありません。地図を見ていると、National Park、National Monument、National Forest、National Recreation Area……「National ○○」がたくさんあって、何が違うのかわかりません。どれも自然を守っている場所に見えるけれど、名前が違うということは制度的に何か違うはずです。

調べてみると、違いは「誰が作ったか」と「誰が管理しているか」の2点に集約されました。

National Park——議会が作る最高位の称号

National Park(国立公園)は、連邦議会の法律によって設立されます。大統領が一人で指定することはできません。大規模で多様な自然資源を持ち、保全する価値が最も高いと議会が認めた場所だけがこの称号を受けます。現在63か所。

管理するのはNational Park Service(NPS、国立公園局)で、内務省の下に置かれています。1872年にイエローストーンが世界初の国立公園に指定され、1916年にNPSが設立されました。

National Parkでは資源の保全が最優先で、伐採・採掘・狩猟は原則として禁止されています。「人の利用のために保全する」ではなく「保全した資源を人が体験する」という順序です。

National Monument——大統領が一筆で作れる

National Monument(国定記念物)は、多くの場合、大統領の宣言(Presidential Proclamation)によって指定されます。法的根拠は1906年の古遺物法(Antiquities Act)で、歴史的・科学的に重要な対象を保護するために大統領に権限を与えた法律です。

議会を通す必要がないので、大統領が一筆で作れる。これがNational Parkとの最大の違いです。セオドア・ルーズベルト大統領はこの権限を積極的に使い、在任中に18のNational Monumentを指定しました。

National Monumentは一般的にNational Parkより小さく、一つの重要な資源(遺跡、地形、生態系など)の保護に焦点を当てています。管理はNPSが行うことが多いですが、Forest Service(森林局)やBureau of Land Management(公有地管理局)が管理するMonumentもあります。

MonumentからParkへの「昇格」

面白いのは、National MonumentがNational Parkに「昇格」するケースがあることです。

グランドキャニオンは1908年にセオドア・ルーズベルトがNational Monumentに指定し、1919年に議会がNational Parkに格上げしました。デスバレー、ジョシュアツリー、アーチーズも、すべてMonumentが先でParkが後です。

National Parkは議会の法律が必要なので、政治的なプロセスを経る必要がある。Monumentは大統領の宣言だけで作れるので、まずMonumentとして保護をかけ、後から議会がParkに昇格させる——こういうルートが確立しています。「National Park」はアメリカの公有地における最高位の称号と言えます。

NPSの調査によれば、MonumentからParkに再指定された8か所では、再指定後5年間で来園者が平均21%増加しました。名前が変わるだけで人が来る。「National Park」のブランド力はそれだけ強いということです。

National Forest——まったく別の機関、別の思想

名前が似ていて紛らわしいのがNational Forest(国有林)です。National ParkやMonumentとは管轄する機関がまったく違います。

National Parkは内務省のNPSが管理しますが、National Forestは農務省のForest Service(森林局)が管理しています。省が違うということは、法的根拠も使命も違うということです。

NPSの使命は「資源の保全」。一方、Forest Serviceの使命は「多目的利用」(Multiple Use)です。National Forestでは伐採、採掘、放牧、狩猟が認められていることがあります。自然を「保全する場所」ではなく「持続的に利用する場所」という位置づけです。

ハイキングやキャンプをする分には似たような体験ですが、制度的にはまったく別の思想に基づいた場所です。

他にもある「National ○○」

National Park Systemの区分はさらに細かく分かれています。

たとえばアラスカのデナリには「Denali National Park」と「Denali National Preserve」が隣り合って存在しています。自然環境はほぼ同じですが、National Preserveでは狩猟が認められている。議会が「ここはParkとして厳格に保護するが、隣接するこちらは地元の狩猟文化を尊重してPreserveにする」と線を引いた結果です。

ワシントンDCのリンカーン記念堂やFlight 93 National Memorial(ペンシルベニア州シャンクスビル)はNational Memorialという区分で、歴史的な出来事や人物を記念する施設です。自然の保全ではなく記憶の保全が目的ですが、これもNPSが管理するNational Park Systemの一部です。

他にも海岸線を保護するNational Seashore(ケープコッドなど)、ダム貯水池周辺のNational Recreation Area(レイク・ミードなど)と区分は多岐にわたります。NPSが管理する施設は全部で425か所以上ありますが、そのうち「National Park」を名乗れるのは63か所だけ。圧倒的に少数です。

America the Beautifulパス($80の年間パス)はこれらの連邦施設をほぼすべてカバーしているので、「National Park用のパス」というよりは「連邦の公有地全般のパス」と理解しておく方が正確です。

ペンシルベニア州には「National Park」がない

ここまで読むと気になるのが、自分が住んでいるペンシルベニア州はどうなのか、ということです。

実はペンシルベニア州にはNPSが管理する施設が20か所以上あります。独立宣言の署名が行われたIndependence National Historical Park(フィラデルフィア)、南北戦争の激戦地Gettysburg National Military Park、ピッツバーグから車で1時間半ほどのFort Necessity National Battlefield(若きジョージ・ワシントンが初めて戦った場所)、先ほど触れたFlight 93 National Memorial。さらにAllegheny National Forest(国有林)もピッツバーグから車で2時間半ほどの距離にあります。

しかしこれだけ施設があるのに、「National Park」を名乗る場所は一つもありません。Historical Park、Military Park、Memorial、Battlefield、National Forest——すべて「National Park」以外の区分です。

425か所のうちの63か所。名前が変われば来園者が21%増える。「National Park」という3語は、アメリカの公有地において特別な重みを持つ称号です。ペンシルベニア州にその称号を持つ場所がないこと自体が、その希少性を物語っています。

国立公園の年間パス $80 — 元が取れる条件国立公園の年間パス $80 — 元が取れる条件国立公園の年間パス $80 — 元が取れる条件イエローストーンに行きたくて調べ始めたら、入園料が車1台$35でした。年間パスは$80。3か所回れば元が取れる計算ですが、パスでカバーされないものと、2026年から入った居住者・非居住者の区別があります。

参考

制度・料金は2026年8月時点で確認しています。変更に気づかれた場合は お問い合わせよりお知らせください。