ピッツバーグで運転していると、見慣れない文字で始まるナンバープレートを見かけることがあります。黄色いスクールバスの「SC」、パトカーの「MG」、Port Authorityのバスの「MT」。かと思えば、Penn Stateのロゴが入ったプレートや、リボンマークの入ったプレートもある。
日本のナンバープレートは地名と分類番号と4桁の数字で、全国どこでも同じ構造です。アメリカのプレートはなぜこんなに種類が多いのか。調べてみると、ナンバープレートがアイデンティティの表現と資金調達の手段を兼ねているという、日本にはない仕組みが見えてきました。
SC・MG・MT——文字で用途がわかる
まず実用的な話から。ペンシルベニア州のナンバープレートには用途別のプリフィックスがあり、文字を見ればその車が何に使われているかがわかります。
SC はSchool Bus。黄色いスクールバス の後部に付いています。MG はMunicipal Governmentで、パトカー、消防車、ゴミ収集車など自治体の公用車全般。MT はMass Transitで、公共交通機関の車両です。他にもSV(School Vehicle)やPA(Official Use、州政府の公用車)があります。
普通の車のプレートはアルファベット3文字+数字4桁(例:KMR 4521)の形式で、文字は発行順に進んでいきます。道路でM始まりやZ始まりをよく見かけるのは、その文字帯の時期に登録された車が多いということです。紛らわしさを避けるため、I(1と混同)、O(0と混同)、Q(9と混同)は使われていません。
ナンバープレートで出身大学をアピールする
ペンシルベニア州で印象的なのが、大学の同窓生向けプレートです。Penn State、University of Pittsburgh、Carnegie Mellon、Templeなど、州内の主要大学のロゴやスクールカラーが入った専用デザインのプレートを申請できます。
日本の感覚からすると「ナンバープレートで出身校をアピールするのか」と驚きますが、アメリカでは大学への帰属意識がとても強い。車のバンパーステッカー、Tシャツ、マグカップ——あらゆるものに大学のロゴを入れる文化の延長線上に、ナンバープレートがあります。ピッツバーグではPenn StateとPittのプレートが特に目につきます。
しかもこれはただのファングッズではありません。追加料金の一部は大学の奨学金基金に寄付される仕組みです。オハイオ州立大学は1年で約$60万をプレートの売上から奨学金に充てたというデータがあります。
プレートが寄付の窓口になっている
大学プレートに限らず、アメリカの特殊プレートの多くは「走る寄付の窓口」として設計されています。追加料金(PA州では$30〜$50程度)を支払ってプレートを取得すると、その一部が特定の基金や団体に直接流れます。
動物保護、がん研究支援、環境保全、退役軍人支援——テーマごとにプレートがあり、車を登録するだけで毎年寄付が発生する仕組みです。全米ではこうした特殊プレートが5,000種類以上あり、ペンシルベニア州とテキサス州はそれぞれ400種類以上を発行しています。コロラド州のレトロデザインのプレートは1枚あたり$25が障がい者支援の基金に入る仕組みで、2025年度にはそこから約$500万が各団体に配分されました。
軍関連のプレート(退役軍人、Purple Heart受賞者、戦没者遺族)、消防士やアマチュア無線のプレートもあります。これらは寄付というよりは所属や経歴を示す意味合いが強いですが、いずれにしても「車のプレートに自分が何者かを載せる」という文化はアメリカならではです。
前のプレートがない
ペンシルベニア州は後部にしかプレートを付けません。日本では前後2枚が義務ですし、アメリカでも約30州が前後2枚を求めていますが、PAは後部のみ。2025年に前部プレート義務化の法案が州上院に提出されていて、2027年からの施行を目指していますが、まだ成立していません。
後部のみだと前方からの車両識別が難しく、ひき逃げやスピードカメラの取り締まりに支障があるという議論がある一方、ドライバーからは「車のフロントデザインが崩れる」「取り付け穴を開けたくない」という反対意見も根強いようです。
2025年にデザインが変わった
2025年6月から、標準プレートのデザインが一新されました。長年使われていた「visitPA.com」から、Liberty Bell(自由の鐘)をあしらった「Let Freedom Ring」デザインに変更されています。独立宣言の地であるペンシルベニア州らしいデザインです。
新規登録分から順次発行されているので、道路上では旧デザインと新デザインが混在しています。見比べてみると、旧デザインの車はそれだけ長くPAで登録されているということがわかります。
日本のナンバープレートは地名と数字で車を識別するためのものですが、アメリカのプレートは識別に加えて、所有者の出身校、軍歴、支持する活動、そして登録時期まで1枚の金属板に載せています。プレートを見るだけで、その車の持ち主がどんな人なのかがうっすら見える。ナンバープレートが「身分証」であると同時に「自己紹介カード」でもある——これがアメリカのプレート文化です。
参考
- PennDOT — License Plates
- NASAA — Specialty Arts License Plates
- Colorado Sun — Colorado’s black license plates are funding disability services
- Billy Penn — New Pennsylvania license plates display Liberty Bell
制度・料金は2026年10月時点で確認しています。変更に気づかれた場合は お問い合わせよりお知らせください。




