ピッツバーグに来て、停電が多いことに驚きました。日本ではほとんど経験した記憶がない。それがアメリカでは夜中に突然電気が落ちて、数時間そのまま、ということが何度かありました。

2025年4月には大きな嵐がピッツバーグ一帯を直撃し、Duquesne Light(地元の電力会社)の顧客だけで32万5000世帯以上が停電しました。復旧に1週間以上かかった地域もあり、Pennsylvania州の議員が公聴会を開いて電力会社を問いただす事態にまでなりました。我が家も数日間電気が止まり、街の信号機まで消えていて、車で移動するのも怖かったです。

なぜこんなに停電するのか

アメリカの送電インフラの多くは1950〜60年代に建設されたもので、当時の設計寿命は約50年。すでにその寿命を超えています。送電設備の約70%は建設から25年以上が経過していて、老朽化した電柱や変圧器がそのまま使われ続けている。その電柱のすぐそばで、街路樹や庭木が何十年もかけて電線に届くほど伸びている——これがアメリカの停電を繰り返す構図です。嵐が来て枝が折れれば電線に直撃し、木が倒れれば電柱ごと折れる。アメリカの停電原因の約83%は気象関連で、その中でも倒木・落枝が大きな割合を占めています。2025年4月のピッツバーグの嵐でも、まさにこのパターンの被害が広範囲に及びました。

そして国土が広大な分、被害が広がると復旧にも時間がかかる。2025年の停電では全米から応援の復旧クルーが駆けつけましたが、それでも完全復旧まで1週間以上を要しました。

日本との差は想像以上に大きい

数字で見ると、差は歴然です。ミネソタ大学の研究によれば、アメリカの平均的な家庭が停電を経験する頻度は約9か月に1回。日本は約20年に1回。年間の停電時間で見ても、アメリカが数十分〜数時間であるのに対し、日本は数分程度です。

日本にいたときに停電をほとんど経験しなかったのは、たまたまではなかった。ちなみに日本も電柱と架空電線の国で、東京ですら無電柱化率は8%程度にとどまります。架空電線だから停電が多い、という単純な話ではなく、送電設備の年齢、樹木管理の密度、気象条件の激しさ、国土の規模——これらが重なった結果がアメリカの停電頻度です。

電線を埋めれば解決するのでは?

「地中化すれば停電しないのでは」と思いますが、話はそう単純でもありません。

架空電線の建設コストは1マイルあたり約10万ドル。地中化すると10倍以上になります。さらに地中のケーブルに障害が起きた場合、場所の特定と掘削が必要なため、復旧にはかえって時間がかかることもあります。停電の頻度は大幅に減るけれど、起きたときの復旧が長引く——そういうトレードオフがあります。

2025年のピッツバーグの大規模停電の後、Pennsylvania州議会でも架空電線を地中に埋設すべきかどうかのコスト・ベネフィット分析を求める動きが出ています。ただアメリカ全土で地中化するのは、コストと国土の広さを考えると現実的にはかなり難しいようです。

停電したときの確認方法

停電が起きたとき、まず知りたいのは「自分の家だけなのか、周辺一帯なのか」と「いつ復旧するのか」の2つです。

ピッツバーグではDuquesne LightがWebサイトとアプリでOutage Map(停電マップ)を公開しています。地図上でどのエリアが停電しているかがリアルタイムで表示され、自分の住所を入れれば復旧見込み時刻も確認できます。自分の家だけなのか、近隣一帯が影響を受けているのかがすぐにわかるのはありがたい。信号機まで止まっているような状況では外に確認しに行くのも不安なので、スマホで状況がわかるだけでも気持ちが違います。日本だと停電自体が滅多にないからこういうツールの存在を意識することもなかったけれど、アメリカでは知っておくべきサービスだと思います。

2025年の大規模停電の際にはこのマップの情報が不十分で批判を受け、Duquesne Lightはその後システムを大幅にアップデートしました。停電の原因や復旧作業の進捗がより詳しく表示されるようになり、テキストやメールで復旧状況を通知してくれるアラート機能も追加されています。引っ越してきたら早めに登録しておくことをおすすめします。

停電が珍しくない国なので、家庭用の発電機(generator)を備えている人も多いようです。停電が長引くと冷蔵庫の食材がだめになるのが一番困るところで、発電機があれば冷蔵庫だけでも動かせる。私自身はまだ持っていませんが、数日間の停電を経験すると、備えについて考えさせられます。

参考