アメリカに来てから、水道水はフィルターを通して飲んでいます。飲めないわけではないですが、何となく気になって。調べてみると、水道水の安全性は「飲める・飲めない」の二択ではなく、都市・配管の状況・基準をどこに置くかによって変わるという話でした。

アメリカの水道水は基本的に安全

アメリカの公共水道は、EPA(連邦環境保護庁)の定める90以上の基準をクリアした水を供給することが法律で義務付けられています。多くの都市では毎年「Consumer Confidence Report(CCR)」という水質報告書を住民に公開しており、内容は各水道局のウェブサイトで確認できます。

ただしEPAの基準は「法的に安全な上限値」であり、EWG(環境ワーキンググループ)などの研究機関が定める「健康上望ましい基準」より緩い場合があります。基準を超えているかどうかと、より厳しい目線で見たときに問題があるかどうかは別の話です。

ピッツバーグの水道水と鉛問題の歴史

ピッツバーグの水道水はアレゲニー川を水源としており、Aspinwall浄水場で処理されています。現在はEPAおよびペンシルベニア州の基準を満たしており、安全とされています。

ただしピッツバーグには水道水に関して重要な歴史があります。2014年、水道局(PWSA)が腐食防止剤を無許可で変更したことで鉛の溶出量が急増し、2016年には調査した住宅の17%以上でEPAの鉛基準(15ppb)を超える濃度が検出されました。フリント市(ミシガン州)と同時期に注目を集めた問題です。

その後PWSAは2019年にオルトリン酸塩(食品グレードの添加物)を処理に加えて鉛の溶出を抑制し、古い鉛管の交換を積極的に進めました。2025年の検査では鉛濃度が2ppbまで低下しており、2016年のピーク時(22ppb)から劇的に改善しています。PWSAは無料の鉛検査キットと、検査で高い数値が出た住宅への無料フィルター提供も行っています。

古い配管がある住宅では注意が必要

鉛の問題は水源や浄水場ではなく、住宅内や地中の配管から発生します。1986年より前に建てられた住宅は鉛管や鉛はんだが使われている可能性があり、たとえ水道局側の水質が改善されていても、自宅の配管で鉛が溶け出すリスクがあります。

古い建物に住んでいる場合は、PWSAの無料検査キットを使って自宅の水を検査するか、NSF認証のフィルターを使うことが推奨されます。特に子どもや妊婦がいる家庭では注意が必要です。

また夏場は塩素の臭いが強くなることがあります。これは有害ではありませんが、気になる場合はフィルターで取り除けます。

都市によって水質は大きく異なる

アメリカの水道水の水質は都市・地域によって差が大きいです。

ニューヨーク市はキャッツキル山脈からの湧き水を使っており、フィルターなしで飲める品質として有名です。シカゴはミシガン湖を水源とし、全米でも高品質な水道水の一つとされています。一方でフリント(ミシガン州)は2015〜16年の鉛汚染危機が国際的に報道され、今もインフラ整備が続いています。

同じ都市内でも地区や建物によって配管の状態が異なるため、水質は一律ではありません。

日本との違い

日本の水道水は世界でもトップクラスの水質管理が行われており、蛇口からそのまま飲むことへの信頼度が高いです。アメリカでも法的な安全基準は満たされていますが、インフラの老朽化・都市による差・基準の違いから、フィルターやボトル水を使う人が多いのが実態です。

「飲めるか飲めないか」ではなく「どの水準の安全性を求めるか」という問いに近い話で、フィルターを使うのは過度な心配ではなく合理的な選択です。

参考