ピッツバーグに来てしばらく経ったころ、Googleマップで目的地を検索していて気づいたことがあります。「Penn Avenue」「Forbes Avenue」「Fifth Avenue」——「Avenue」ばかりが目に入る。日本では「〇〇通り」の一種類で済んでいたはずなのに、アメリカの地図にはSt・Ave・Blvd・Dr・Rdと、見慣れない略語が並んでいます。どれも「通り」と訳されるはずなのに、何が違うのか。調べてみると、住所の仕組みそのものが日本と違うところから話が始まりました。
日本とアメリカ、住所の仕組みがそもそも違う
日本の住所は「区画(ブロック)」が基準です。「〇〇区〇〇町2丁目3番4号」という形で、どの区画に属するかで番地が決まります。通りに名前がなくても住所は成立します。
アメリカの住所は「通り」が基準です。「123 Penn Avenue」であれば、Penn Avenueという通りに面した123番地、という意味になります。建物の入り口が面している通りが、そのままその建物の住所になる。この仕組みのため、アメリカでは裏路地も行き止まりの細道も含めて、すべての道に名前がついています。
ピッツバーグではこの徹底ぶりが特に顕著で、市内の通り名は2,000以上にのぼると言われています。1914年には市内のすべての「Alley(路地)」を「Way」に改名したという歴史もあります。
Ave・St・Blvd・Dr、それぞれの意味
Street(St) は最も基本的な通りの種類で、日本語の「〜通り」に最も近い感覚です。両側に建物が立ち並ぶ、市街地の一般的な道を指します。
Avenue(Ave) は語源がフランス語の「近づく道」で、もともとは並木道のある格式ある通りを指していました。ニューヨークでは南北に走る道にAvenueが使われ、「Fifth Avenue(5番街)」が有名です。ただしこの原則はニューヨーク特有のもので、他の都市では必ずしも当てはまりません。ピッツバーグの「Penn Avenue」は東西方向に走っていて、その典型的な例外です。
Boulevard(Blvd) は中央分離帯や街路樹が整備された、幅の広い幹線道路です。語源はフランス語で、もともとはパリの城壁跡に整備された遊歩道を指す言葉でした。「Sunset Boulevard(サンセット大通り)」が世界的に知られています。
Drive(Dr) は住宅地に多く見られる、やや曲がりくねった道に使われることが多いです。語源は「馬車を走らせる道」で、丘の上や川沿いにある景観の良い道がDriveと名付けられていることもあります。ピッツバーグは丘が多い地形なので、住宅街に入るとDriveやLaneがぐっと増えます。
Road(Rd) はもともと「旅をする道」の意味で、郊外や地方の道、町と町をつなぐ道に使われることが多い。
他にも地図でよく見かけるものとして、Lane(細い小道)、Court(行き止まりの小道)、Parkway(公園や緑地沿いの道)、Way(路地や小道、ピッツバーグに特に多い)などがあります。
実は厳密なルールはない
ここまで説明してきましたが、これらの使い分けに全国共通の厳密なルールはありません。都市によって定義が異なり、同じ「Avenue」でも南北を指す都市もあれば東西を指す都市もあります。
住所に出てくるSt・Ave・Blvdは、道の性質を示すというよりも、同名の道が同じ市内に複数存在しないようにするための区別として機能しています。「Penn Street」と「Penn Avenue」は別の道です。大きさや方向を示すラベルというより、区別のための記号に近い。
通りの名前、どうやってつけられているのか
アメリカの通りの名前には、いくつかの典型的なパターンがあります。
数字のパターンは計画的に開発されたダウンタウンに多く、1st・2nd・3rdのように順番に並びます。「今は3rd Streetだから8th Streetまであと5ブロック」と距離感がつかみやすい。アメリカで最も多い通り名の上位3つは「2nd」「3rd」「1st」だと言われています。
樹木や花の名前をアルファベット順に並べるパターンもあります。A Street、B Streetのような単純なものから、Azalea・Birch・Cherry・Dogwoodのように植物名を順番に並べたものまで。
大統領や歴史的人物の名前(Washington・Lincoln・Jefferson)、州の名前(Pennsylvania・Ohio)、地名(Liberty・Market)が通りの名前になっているケースは全米的に多く見られます。ピッツバーグのダウンタウン周辺も、歴史的な人物や地名に由来する通りが集まっています。
ピッツバーグにAvenueが多い理由
地図を見ていると、ピッツバーグはやたらとAvenueが多いことに気づきます。Penn Avenue・Forbes Avenue・Liberty Avenue・Fifth Avenue——ダウンタウン周辺の主要な道はほぼAvenueです。
これにはアレゲニー川との関係があります。ピッツバーグでは歴史的に、アレゲニー川に対して垂直に走る道がStreet、平行に走る道がAvenueと名付けられてきました。ダウンタウンから東へ延びる主要な幹線道路はおおむね川と平行に走っているため、Avenueが集中することになります。
通りの名前には歴史も刻まれています。Forbes AvenueはFort Duquesneへの道を切り開いた英国将軍ジョン・フォーブズにちなんでいます。そしてFifth Avenueの来歴が特に面白い。もともとは「Braddock’s Field road」と呼ばれていたこの道は、1807年に「Fourth Street road」へ、その後「Pennsylvania avenue」へと改名され、現在の「Fifth Avenue」という名前に落ち着いたのは1876年のことです。今の名前からは、その歴史の痕跡はまったく読み取れません。
ピッツバーグの通りを歩くとき、川との位置関係や名前の由来を少し意識してみると、地図が少し違って見えてきます。
参考
- Grant Segall, “Why does Western Pennsylvania have such odd street names?”, NEXTpittsburgh, 2025 — https://nextpittsburgh.com/features/why-are-western-pa-street-names-so-strange/
- Pittsburgh Streets Project, “Source: Street-names”, zifyoip.com — https://www.zifyoip.com/pittsburgh-streets/Source:Street-names
- “Numbered street”, Wikipedia — https://en.wikipedia.org/wiki/Numbered_street
- “What makes a road a boulevard or avenue or street?”, West Hills Gazette, 2026 — https://westhillsgazette.com/what-makes-a-road-a-boulevard-or-avenue-or-street/