アメリカの家に引っ越して、洗濯機と乾燥機が別々の機械だったことに最初は驚きました。日本では洗濯乾燥機の一体型を使っていたので、なぜわざわざ2台も置くのかと思った。しかもサイズが大きい。そして下が洗濯機、上が乾燥機のスタック型で設置されていて、よく見るとドアの開く方向が洗濯機と乾燥機で逆でした。

ドアの向きが逆なのには理由がある

些細なことですが気になったので調べてみると、洗濯物を移し替えやすくするための設計でした。

横並びに置く場合、洗濯機と乾燥機のドアが互いに外側に開くようになっていると、両方のドアを同時に開けても干渉しない。洗濯機から取り出した洗濯物をそのまま隣の乾燥機に入れる動線がスムーズになります。

乾燥機のドアはほとんどの機種でヒンジの位置を左右付け替えられるようになっていて、設置場所に応じて開く方向を変えられます。一方、洗濯機のドアは安全ロック機構の構造上、付け替えできない機種が多い。だから洗濯機のドアの向きに合わせて乾燥機のドアを調整する、という設計思想です。

たった2台の機械のドアの向きにまで設計上の配慮がある。それだけ「洗濯機と乾燥機は別々に2台持つ」のがこの国の大前提だということです。

なぜ一体型ではなく別々なのか

日本やヨーロッパでは洗濯乾燥機の一体型(コンボ型)が一般的です。1台で洗濯から乾燥まで完結する。アメリカでもコンボ型は売っていますが、主流ではありません。理由はいくつかあります。

まず、場所がある。アメリカの住宅は日本と比べて圧倒的に広い(物件情報の広さの見方 )。地下室やガレージ、専用のランドリールームに2台並べるスペースが確保できます。日本の住宅事情で一体型が普及したのは、2台置くスペースがないからという面が大きい。

次に、性能の差。一体型は洗濯槽と乾燥機能を一つのドラムに収めるため、乾燥の容量が洗濯の半分程度になることが多く、乾燥に時間がかかります。別々の機械であれば、洗濯機が1回目の洗濯をしている間に乾燥機で前の洗濯物を乾かすことができる。大量の洗濯物を効率的にさばくには別々の方が合理的です。

そして故障のリスク。一体型は片方が壊れれば両方使えなくなりますが、別々なら壊れた方だけ交換すればいい。修理費も部品も別です。

アメリカの住宅では洗濯機と乾燥機の接続口(水栓・排水・ガスまたは電源・排気ダクト)があらかじめ設置されていることが多く、賃貸でも機器が据え付けられている物件が一般的です。「2台持ち」を前提にしたインフラが住宅に組み込まれている。

外に洗濯物を干さない

アメリカに来て以来、外に洗濯物を干している家を一度も見たことがありません。日本ではベランダに洗濯物を干すのが当たり前の光景ですが、アメリカではほぼ見かけない。

理由の一つは乾燥機が標準装備だからですが、もう一つ大きな理由があります。HOA(Homeowners Association、住宅地の自治組織)が物干しを禁止していることが多いのです。

HOAは住宅地の景観や資産価値を維持するためにさまざまなルールを定めていますが、その中に「物干しの禁止」が含まれていることがあります。推定でHOAの半数以上が物干しを制限または禁止しているとされています。背景には、1950年代以降の電化製品のマーケティング(“Live Better Electrically"キャンペーンなど)によって「外に洗濯物を干すのは貧しさの象徴」というイメージが定着したことがあります。

これに対して「Right to Dry」(干す権利)運動が起き、19の州で物干しの禁止を無効にする法律が成立しています。ペンシルベニア州でも2025年に物干しの権利を保護する法案が下院を通過しました。洗濯物を干す権利が州法の議論になるあたりも、州ごとにルールが違うアメリカ らしい話です。「洗濯物を太陽で乾かすのに法律が必要とは馬鹿げている」という提案者の発言が印象的です。

日本から来ると、洗濯物を干す権利が法律の議論になること自体が驚きですが、HOAの規制力の強さと「景観=資産価値」という考え方がアメリカの住宅文化の根底にあることがわかります。

ガス式と電気式がある

日本の洗濯乾燥機はほぼすべて電気式ですが、アメリカの乾燥機にはガス式と電気式の2種類があります。

ガス式は天然ガスで空気を加熱するため、乾燥が早く、ランニングコストは電気式より安い傾向があります。ただし初期費用がやや高く、ガスの接続工事が必要です。電気式は設置が簡単ですが、240V(日本の倍以上の電圧)の専用コンセントが必要です。

どちらを使うかは住宅にどちらの接続口が用意されているかで決まることが多く、自分で選ぶというよりは「家に付いている方を使う」という感覚です。

まとめ

洗濯機と乾燥機が別々で、外に干さず、ドアの向きにまで設計上の工夫がある——洗濯という日常的な行為の周辺に、アメリカの住宅の広さ、HOAの存在、乾燥機文化が凝縮されています。日本の一体型に慣れた目には最初は大げさに見えましたが、実際に使ってみると大容量の乾燥機はよく乾くし、タオルがふわふわに仕上がる気がする。この仕上がりに慣れてしまうと、外干しに戻れなくなるのかもしれません。

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参考